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ベルギー の方が掛軸を買いに
今回は先日弊社にお越しになられたベルギー出身のお客様とのエピソードをご紹介させていただこうと思います。
弊社は兵庫県の神戸市垂水区に位置しております。
それほど大きなギャラリーではないですが1階がギャラリーとなっており、何点かの掛軸と油絵や日本画などの額装品を展示しております。
このギャラリーでお客様に作品を見ていただいたり、表装サービスの打ち合わせを行ったりします。
私自身は普段はこのギャラリーにはあまりおらず奥の方で作業をしている事の方が多いです。ちょうど先日も奥の方で作業をしていると弊社のスタッフがニヤニヤしながら私の方に近寄ってきました。
「どうしたん?」と聞くと
「外国の方来られたよ~」と嬉しそうに報告しにきました。
私、正直油断しておりました…( ゚Д゚)
今までも海外の方が日本に来られた際に弊社に掛軸を買いに来られたり表装サービスをご依頼されたりといった事はあったのですが、いまはコロナの影響で飛行機が止まってしまっているのでしばらくは海外の方が来られる事はないだろうと思っていた中での来店でしたので正直不意打ちで驚きました。
弊社で英語対応をするのは私か妻のどちらかがメインになります。一度だけ偶々二人とも留守にしている際にカナダから若い男性客二人が掛軸を見に来られた事がありましたが、その時はなんとかかんとか弊社の専務…私の母親になるのですが、接客をさせていただきお気に入りの掛軸を見つけていただき満足して帰られたという事がありました。
多分英語は話せていなかったと思うのですがそれでも何とかお客様に満足してもらいたいという想いでジェスチャーなどでコミュニケーションを取り、お気に入りの掛軸を見つけていただいたというのはすごいバイタリティだなと感じました。我が親ながらやるときゃやるな…団塊の世代スゲ~。
まぁ今回は妻が不在でしたので私が担当させていただく事になりました。ギャラリーの方に行くと、若い女性の方二人とどちらかのお子さんが来られてました。
話を聞いてみるともちろん旅行客ではなくて弊社の隣町の塩屋に住んでいるベルギー出身の方でした。
今までもベルギーの方に掛軸をご購入いただいた事は何度かあるのですが、お店に来られるというのは初めてだったのでとっさにベルギーと聞いて思い浮かんだものは「サッカー強い」「チョコレート」くらいでした。いくら油断していたとはいえ自分の発想力の無さに自分で自分にがっかりしてしまいました。(´・ω・`)ショボーン
色々お話しをお聞きしてみると日本の伝統的な芸術品に興味があるらしく渋い感じの物が見たいという事でした。ひとまずお客様に席に掛けていただき、私は倉庫(弊社の3階)に向かい色々とお客様のご要望に合いそうな掛軸をピックアップして再びギャラリーに戻り作品をお見せさせていただきました。
お客様の反応は上々で色々二人で作品について話しあったり、気になる事をこちらに聞いてきたりと楽しく接客させていただきました。
弊社のギャラリーというのはそれほど広いスペースがあるわけではなく掛軸は一度に飾れても10点程度しか飾れないので、弊社の接客はお客様のニーズを色々とお伺いし、そのニーズにマッチしそうな掛軸をピックアップしてご提案するというスタイルをとっています。これは別に海外の方だけというわけではなく日本のお客様でもそうで弊社が何十年も行ってきたスタイルなのですが、実はこのヒアリング&提案のようなスタイルが接客をしていて一番楽しいです。
色々な買い物の仕方というのがあると思うのですが多くは大きなお店のスペースに多くの商品が大量展示されていて、自分でその中から選ぶというスタイルだと思います。もちろんそういったスタイルも楽しいとは思うのですが、弊社のスタイルは
お客様のニーズをじっくりと聞いてそれに合いそうな物をプロである我々が厳選して提案する。
→ その提案を受けてお客様が気に入ればどんどん深堀りした説明を行う。少しイメージと違うといった場合は再びお客様のより細かなニーズをお聞きして新たに違う作品を提案する。
といった形で、まるでお客様と一緒に「お客様のお気に入り」を見つけ出す冒険をしているようでとても楽しく、お客様が「これが良い!!」というのを見つけた時は本当にお客様と一緒になって喜んでしまいます。
今回のご提案でお客様が気に入っていただいた作品はこちらの2点の書の掛軸でした。
夢という字と福という字の掛軸ですね。両方とも海外でも縁起の良い言葉です。同じ文字の掛軸もご提案させていただいたのですが、お客様は表装の色合いなどを考慮してこちらの掛軸が自分のご自宅に合うと判断して気に入って下さいました。
早速ご自宅で飾っていただけるようです。おそらく床の間ではないと思いますが海外の方がご自身の感性でお部屋のインテリアとして掛軸を飾ると非常にオシャレに飾られる場合が多いです。下の写真はスイスのお客様のご自宅で弊社が仕立替をした掛軸を飾っていただいている写真ですが非常にオシャレですよね。今回の掛軸もどういった飾られ方をしているのか見てみたいものです。
お客様から接客に関する感想も頂戴いたしました。べた褒めですが純粋にめちゃくちゃ嬉しいですね。
まぁ私の英語はパーフェクトな英語ではないですけどね。インチキ英語です(苦笑い)。
ちょうど私は2013年頃から「海外の方にも日本の掛軸の魅力を知ってもらいたい。」という想いから色々な活動をスタートさせました。
それまではほとんど英語に触れる生活というのをしていなかったので、英語を勉強し直したのはそれこそ高校以来の事でした。それから毎日少しずつ英語を勉強する事を続けて何とか今ではコミュニケーションを取れるようになったというレベルです。
今でももちろん勉強は続けていますが、自分の英語のレベルが上がる事で海外の方とコミュニケーションを取れるようになり掛軸を一緒に楽しめるようになるというのは面白いですね。海外の方が掛軸をどういった感覚で受け取るのかなどを知る事が出来るようになったのは自分の中で大きな財産です。
今回は日本に住まわれているベルギーの方が来られたお話をご紹介させていただきました。今までも東京に住まわれている海外の方が掛軸の修理を弊社にご依頼されるというような事はあったのですが、実際に在日の海外の方が弊社に来られるというのは初めてのパターンでしたのでとても刺激的でした。
今回のようにもし皆様のお知り合いで日本に住まわれている海外の方が掛軸に興味があってどこかお店を探されているというような事がございましたら是非弊社をご紹介ください。
我々チーム野村が全身全霊全力でご対応させていただきます。
今回は「掛軸屋の日常」という事でちょっと変わったエピソードというのをご紹介させていただきました。
なかなか我々のような掛軸屋が普段どういった仕事をしていてどういった世界があるのかというのを知っていらっしゃる方は少ないと思います。掛軸屋の日常というのは今回のように刺激的で楽しく、面白いエピソードが沢山ありますので少しでもそういった世界というのを知っていただき、掛軸に興味を持っていただければと思いますのでこれからも情報を発信させていただこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
動画: ベルギー の方が掛軸を買いに