和紙に描かれた 額装作品を掛軸へ仕立替 | アメリカ

和紙に描かれた 額装作品を掛軸へ仕立替 | アメリカ

和紙に描かれた 額装作品を掛軸へ仕立替 | アメリカ

 

お客様からよく頂戴するご相談で

「 額装作品を掛軸へ仕立替 は出来ますか?」

といった内容の物があります。

これは結論から申し上げるとケースバイケースですね。

額装されている作品の素材の種類と使っている絵具や墨の種類によって出来る場合と出来ない場合に分かれます。

作品の素材に関しては、掛軸は鑑賞する時は広げて飾り、収納する時は巻いて保管します。

この広げたり巻いたりを繰り返す作業を可能にするために、ある一定のしなやかさと強度が必要になってきます。

作品の素材が薄い和紙であったり絹であれば掛軸に仕立てる事は可能なのですが、厚みのある素材であったり硬い素材の物を掛軸に仕立てて巻こうとすると作品に折れが発生してしまいます。硬い画用紙を小さい径で巻こうとすると折れが発生するようなイメージです。

絵具や墨に関しては、額装されている作品を掛軸に仕立てる際に大量の水を使用するので膠成分を含んでいない絵具や墨で描いているとその水分で滲んだり流れたりしてしまいます。サインペンで書いた文字なんかに水をかけるとぶわ~ってインクが広がるようなイメージです。

表具に関する注意点に関してはこちらにまとめていますのでご参照ください。

 

さて、今回はそんな額装から掛軸への仕立替のご相談をアメリカ・カリフォルニア州にお住いの男性のお客様より頂戴いたしました。

 

 

アメリカより 額装作品を掛軸へ仕立替 して欲しいというご相談

ご相談いただいたのはこちらの写真の作品。

額装作品を掛軸へ仕立替

 

赤の立葵が描かれている作品ですね。日本では梅雨の時期くらいから咲き始める初夏の花です。季節掛に関してはこちらのリンクをご参照ください。

 

こちらの作品は額には入っているようなのですが特に額に貼り付けられている訳ではないようなので作品のみを額から取り外して送る事が出来るとの事でした。

額に作品が貼り込まれている場合は、無理に額から剥がそうとすると破れてしまうので額ごと送っていただく必要があるのですが、アメリカから日本に額を送ろうとすると結構な送料が発生してしまうので気になっていたのですがひとつ問題がクリア出来て良かったです。

描かれている素材は和紙との事なので掛軸に仕立てるのに大丈夫だとは思いますが現物確認するまで気が抜けません。(写真では和紙の材質や厚みまではわからないので。一口に和紙と言っても種類は山のようにありますからね。)

さて、描かれている材質は一応クリアしたのですが、問題は描いている絵具の種類です。

なんとお客様がおっしゃるには「水彩絵の具」らしいのです。

水彩絵の具は水をかけると滲んだり流れたりする代表的な素材なので基本的には表具NGです。

その滲みを防ぐ特殊な薬剤もあるにはあるのですが、100%を保証するものではないので必ず作業を行う前にリスクを承諾してもらう必要があるのです。

しかし、その「水彩絵の具」というお客様の情報は結構あやふやらしいのです。特に確証があるわけではなく「何となくそれだと思う」程度のアンサーでした。

そして私は「既に額装されているので裏打をする際に一度水分を使っているはずなので、水彩絵の具で描かれているのであれば既にその時に滲みが発生しているはずなのですが写真を見る限りではそういった形跡が見られないのでもしかしたら水彩絵の具ではないのではないか」という疑念がありましたので、その事をお伝えした上でお客様に了承をいただき、作品をアメリカからお送りいただきました。

 

打ち合わせ

作品が無事にアメリカから弊社に到着いたしました。

作品は裏打されていますが思ったほど厚みはなく、古い裏打紙を除去すれば掛軸に出来そうです。

額装作品を掛軸へ仕立替

 

 

問題の絵具の材質ですが、水彩絵の具ではなさそうなのですがそれでも膠が随分と弱まっているようでした。

実際に表装作業に入る前に綿棒や脱脂綿に軽く水分を含ませて絵具の部分を軽く触れてみるプレチェックを行うのですが赤色の絵具が写ってきました。

額装作品を掛軸へ仕立替

 

 

通常の絵具の定着剤ではおそらく止まらないですが、1ランク強力な定着剤を使用すれば水彩絵の具ではないので止められると判断しました。

ただ100%の保証は出来ないという旨をお客様に再度確認し、ご了承いただけた上で行う事といたしました。(確認はとても大切です。)

次に掛軸の仕立てに関する打ち合わせを行いました。

何パターンか仕上がりのイメージ図を作成させていただき、お客様に選んでいただきました。

今回お客様が選ばれた仕立てはこちらです。

額装作品を掛軸へ仕立替

額装作品を掛軸へ仕立替

 

立葵の淡い赤色が引き立つような色と柄の裂地を使用する事に致しました。

さて、打ち合わせが完了してお支払いも確認出来ましたのでいよいよ作業開始です。

 

額装から掛軸への表装工程

今回の大まかな作業の流れは以下です。

色止め (強力な滲み止めの薬剤を複数回に分けて塗布します。)

旧裏打紙を除去 (作品の裏側から旧裏打紙をめくって除去していきます。)

再表具 (お客様のご要望の裂地で掛軸に仕立てていきます。)

 

スライドショーには JavaScript が必要です。

 

額装から掛軸へ仕立替完了

長い工程を経てついに掛軸への仕立替が完了いたしました。

額装作品を掛軸へ仕立替

 

心配していた色流れも発生させる事無く無事に掛軸に仕立てる事が出来て何よりです。

 

表装に使われている裂地の色柄も狙い通り立葵の色を引き立てていて嬉しく思います。

 

早速お客様にお送りさせていただきました。

お客様にもご満足いただけたようで以下のようなコメントを頂戴する事が出来ました。嬉しい限りです。

I received the kakejiku today.

You did a very beautiful job.

Thank you.

 

またこうして弊社の技術が世界のお客様のお役に立てた事を誇りに思います。

弊社では額装作品から掛軸に仕立替るご相談を世界対応で承っております。

お困りの方がいらっしゃいましたら遠慮なしにご相談ください。

 

CEO Message

あなたと掛軸との懸け橋になりたい


掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



代表取締役社長
野村 辰二

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会社概要

会社概要

商号
株式会社野村美術
代表取締役
野村辰二
本社
〒655-0021
兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
TEL
078-709-6688
FAX
078-705-0172
創業
1973年
設立
1992年
資本金
1,000万円

事業内容

  • 掛軸製造全国卸販売
  • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
  • 掛軸表装・額装の全国対応
  • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
  • 宣伝広告業務
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