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アメリカのお客様から西国三十三観音霊場巡りの掛軸制作依頼
霊場と納経軸
霊場とは神仏の霊験あらたかな場所の意味で、神社・仏閣などの宗教施設やゆかりの地など、神聖視される場所の事を言います。
代表的な霊場は四国一帯に広がる弘法大師・空海にまつわる88ヶ所の寺院の霊場『四国八十八ヶ所』や近畿二府四県と岐阜県に点在する33ヶ所の観音信仰の寺院の霊場である『西国三十三観音霊場』などがあります。霊場を構成するひとつひとつの寺院や神社の事を「札所」と呼んだりもします。
四国八十八ヶ所は海外の方にも知られており巡られる方も多いようですが、最近は西国三十三観音霊場を巡る海外の方も増えてきているようです。
こういった霊場を巡った証として各札所の「納経所」という場所で朱印を納経帳などに押してもらい、コンプリートするスタンプラリーのような物も人気です。
納経所で料金を支払って朱印とその札所の名前などを揮毫してもらいます。料金は300円~500円。書いてもらう物によって価格が変わります。
帳面に揮毫してもらい集めるスタイルが一番一般的です。
この朱印集めグッズの中には『納経軸』と呼ばれる掛軸の材料となる物もあります。
この納経軸は真ん中だけに絵や文字が入った無地の絹を、各札所の名前が記載された紙の上に仮止めした物です。絹と紙の2枚セットの形をしています。各札所の納経所の揮毫担当者は台紙における自寺の場所を確認してその上に朱印を押します。
全ての札所で朱印を押してもらったら下の写真のような状態になります。この状態で我々のような掛軸を仕立てる表具屋さんに持っていって掛軸にしてもらいます。表具屋さんは紙の台紙から朱印が集められた絹を取り外して、その絹を掛軸に仕立てていきます。
表具師によって表装が完了した掛軸がこちらです。
今回はそんな西国三十三観音霊場の納経軸を掛軸に仕立てて欲しいというご依頼をアメリカのお客様から頂戴いたしました。
アメリカのお客様から西国三十三観音霊場巡りの掛軸制作依頼
お客様は2019年に日本に長期滞在した際に西国三十三観音霊場の存在を知り、巡礼を始めたそうです。
その際に納経軸に朱印を集めて完成させたらしいのですが、急遽アメリカに帰らなくてはならなくなり、掛軸に仕立てる事が出来ずに仕方なくアメリカに持って帰ったそうです。
すぐ来日する予定だったのが2020年はコロナが世界中で猛威を振るった為、とても日本に旅行に行く事が出来ない状況の為、ずっとこの納経軸をどうするか悩まれていたそうなのです。
そんな折に世界対応で掛軸の相談を受け付けている弊社の存在を知り、今回のご相談に至ったようです。
弊社がこれまでにスイスの方から四国八十八ヶ所の掛軸表装依頼をお受けした事があったのも相談の後押しとなったようです。
メールでざっくりの最低必要価格をお伝えさせていただき、お客様の予算の範囲内だったので快諾してくださり台紙を送っていただきました。
こちらが届いた台紙から朱印が集められた絹だけ取り外した状態の物です。
台紙到着後、作品に問題がない事を確認し(結構巡り忘れがあったりする場合が多いのです。)、どの表装パターンで仕上げるかを打ち合わせました。
弊社は標準で約20種類ほどのコースを予算に応じてご用意しており、そちらをご紹介させていただきました。
今回はこちらの裂地を使用しての仕立てにする事に決まりました。前回、四国八十八ヶ所を表装したスイスの方と同じ裂地です。
金糸が使われている裂地ですが光沢を抑えた金糸なのでいやらしい派手さはなく、重厚みも損なわない風合いの良さが海外の方にも気に入っていただけたようです。
お支払いも完了したのでいよいよ表装スタートです。
表装作業
製作作業風景です。
西国三十三観音霊場掛軸完成
長い工程を経てついに西国三十三観音霊場の掛軸が完成いたしました。
お客様の選んだ裂地で表装することにより、作品が荘厳な雰囲気で格調高く仕上がっていますね。
お客様は完成を首を長くして待たれていたので完成のご報告をさせていただき早速発送させていたました。
作品を受け取ったお客様からは
『1年以上もめぐり終えてから経ってしまったので待ちに待ったが、これほどの出来になって仕上がってくれて本当に嬉しい。』
と感謝の言葉を頂戴いたしました。
お客様のご期待に応える事が出来て何よりです。
弊社では今回のように西国三十三観音霊場巡りの掛軸表装を全世界対応で承っております。
様々なコースをご用意しておりますのでご要望がございましたら遠慮なしにご相談下さい。