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台紙貼り表装 | 小さな作品を大きく見せる掛軸表装
お客様からのご相談の中でよくあるのが
「作品サイズが小さいのでそのまま掛軸にしてしまうと床の間に飾った時、貧相になってしまうので何とかなりませんか?」
という内容。
これはどういう事かというと、小さな作品を通常通りの形式で掛軸に表装しようとすると当然仕上がり寸法(掛軸全体の寸法)も作品寸法にあわせて小さくなってしまいます。
小さな掛軸を床の間に飾ると、広い床の間に対して掛軸が小さく見え、スカスカに感じられ寂しく見える場合があるという事です。
これを何とかする為の表具の形式が「台紙貼り」と呼ばれるフォーマットです。
「台紙貼り」は「台表具」とも呼ばれ、作品を作品よりも大きな地紙(台紙)に貼り込み、それを作品寸法として軸装する事を言います。
色紙、短冊など比較的小さい作品を台紙貼りにする事が多く、比較的大きな作品でも方形ではない変形の物は、本紙の外形を整える為に台紙貼りにする事があります。
今回はそんな台紙貼り表装のご依頼をドイツの男性のお客様より頂戴いたしました。
こちらのお客様は以前より弊社をご利用してくださり、今までも掛軸の修復を手掛けてまいりました。その時の記事はこちらです。
今回修理のご依頼をいただいたのはこちらの2点の掛軸。
どちらも画讃の作品で茄子の絵の方は通常通り仕立替をすれば良いのですが、雁の絵の方は台紙貼りになっています。
確かに本紙寸法が少し小さく感じるので以前の表具師さんが作品寸法を大きくする為に台紙貼りで表装されたのでしょうね。
当然、ドイツのお客様はそのような事情を知る由もなかったので、「台紙貼りとは何なのか?」「何の為に行うのか?」についてご説明させていただき、新たに仕立替をする際に台紙貼りで行うのか通常通りの形式で仕立替をするのかを検討していただきました。
英語でこういった台紙貼りの説明を表現するのはそれに付随する様々なバックグラウンドの知識もご説明しないといけないので大変なのですが、それでもきちんと説明をしてあげる事が大切だと思い弊社ではなるべく丁寧にご理解をいただけるように説明するよう心がけております。
お客様も説明に喜んでくださり、台紙貼りで仕立替をする事を希望されました。
もしかしたらこういった丁寧な解説により、日本文化の色々な情報を知る事を楽しんでいるのかもしれませんね。
こちらが台紙貼りを行っている最中の写真です。
台紙は作品の大きさより糊代分だけほんの少し小さく刳り貫き、作品と糊で接着し、一体化させます。
何故刳り貫くのかというとそのまま台紙に作品を貼り込んでしまうと厚みが発生してしまい、掛軸に仕立て巻いていく際に折れジワが発生してしまう可能性があるからです。
こちらが仕立替が完了した作品です。見事に台紙貼りで作品がよみがえりました。
もう一点の茄子の掛軸も仕立替を行い綺麗によみがえりました。
お客様にも大変喜んでいただけました。
I am very happy to let you know, that the hanging scrolls arrived safely in Berlin and that I am super pleased with the result of the remounting.
Let me thank you again for your fantastic help by choosing the right fabrics and mounting style and the always good cooperation through the whole remounting process.
I am really enjoying working with you together and hope to meet you soon one time in person, when I will be able to come to Japan again.Looking forward to new future project and wishing you and your family all the best!
掛軸が無事にベルリンに届き、仕立替の仕上がりに大変満足してます。
作品にふさわしい裂地と表装形式を選び、全体を通じて常に良い協力をしてくれたことに、改めてお礼を申し上げます。
私はあなたと一緒に仕事をするのが本当に楽しいですし、また日本に行く事ができたら、近いうちにあなたに直接お会いしたいと思っています。
今後の新しいプロジェクトに期待し、あなたとご家族の幸せを願っています。
弊社のサービスが遠いドイツの地のお客様にも認められ大変嬉しい限りです。
日本では衰退の一途をたどっている掛軸の文化ですが、価値を見出してくださる方は海外にもいらっしゃるというのが弊社のスタッフ一同のモチベーションにもつながっております。
今後も掛軸を通じて日本の魅力を海外の方にお伝えしていきたいと考えております。