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アメリカから日本旅行中に掛軸修理にご来店

掛軸修理でご来店
弊社は世界中から非常に多くの掛軸の修理のご相談を承っております。
多くの場合はオンラインでのやり取りで打ち合わせを行い、掛軸を弊社に送っていただき修理仕立替を行いご返送するというケースなのですが、最近、弊社に直接ご来店くださり、修理の打ち合わせを行う機会が増えてまいりました。
今回はアメリカから日本旅行中に弊社に掛軸修理の為にご来店くださったお客様のエピソードをご紹介いたします。
ご来店までのやり取り
今回ご相談をくださったお客様は初めての日本旅行で、当初より掛軸の修理の為に弊社に来店するつもりだったようです。
ホテルに滞在されている際に前もって弊社に修理可能かどうか、来店可能かどうかの問い合わせがありました。こちらがホテルから送っていただいた掛軸の写真です。
写真で作品の状態を確認した限りでも傷みがかなりひどく、作品が完全に裂けてしまっている部分も多数見受けられる上、仕立替を行おうとするとさらなる裂けが発生する事が予想出来ました。
その為、作品の欠落や裂けに関しましては鑑賞する上での妨げにならないように補彩を行う必要がある事を伝え、それらの修復作業も含めてのおおよその費用の概算を出しました。
せっかくご来店されたのに修理費用が予算を越えてしまい依頼出来ずに無駄足になってしまうのを防ぐ為です。
お客様はこちらのお見積もりを了承してくださり、京都観光の後、神戸まで新幹線を使い在来線に乗り換え、垂水駅からは徒歩で弊社にご来店くださいました。
こちらが今回ご来店くださったお客様です。

お二人とも上品で優しく、アートの事や旅行の事、日本の素晴らしさなどについて沢山お話しくださいました。特に日本はとても清潔で人々は丁寧で優しく、自然も素晴らしいとおっしゃってくれていたのが大変印象的でした。
今回ご持参された掛軸はお客様のお父様の持ち物だったらしく修復して飾りたいと強い思いがあるようでした。弊社を頼ってご来店までしてくださっているので出来る限りのご対応をさせていただきたいと弊社スタッフも感じました。
虎の掛軸修理の打ち合わせ
ご持参いただいた虎の掛軸の実物を拝見させていただきましたが、予想以上に深刻な損傷を受けている状態でした。
この部分は完全に絵が裂けてしまっている状態で、少しでも衝撃や無理な力が加わるとすぐに悪化してしまう事が容易に想像出来る程に危険な状態でした。

こちらの部分も裂けが発生している上にかなり強烈なシミ汚れが発生している状態です。

修理を行う上でお客様に以下のリスクを丁寧に再度ご説明させていただきました。
■仕立替を行う上で旧裏打紙を除去する際に、裂けを拡大させないよう最大限配慮するが、どうしても多少は広がってしまうのは避けられない。
■裂けがある部分はそのままの状態では鑑賞する上で妨げとなるので補彩を行い自然に見えるようにする。
■右上のシミはかなりひどいが、作品の状態がかなり危険なので無理に強力なシミ抜きを行うと作品自体が耐えられなく損傷する可能性が高いので出来る限りの除去で留め、作品の保全を最優先にする。
お客様もそのリスクは十分承知してくださり、それでも弊社に全幅の信頼を置いてお任せしたいとおっしゃってくださりました。
表装の裂地選び、表装形式などはこだわりがそこまではなく、現物に似た雰囲気であればこちらのご提案の中から選ぶという事でしたので、いくつか候補の裂地をお出しし、こちらの裂地で仕立替を行う事が決定いたしました。

また、今回の掛軸は上下の裂地が非常に短く一般的な日本の掛軸バランスとは異なる寸法で不細工でしたので日本の一般的な掛軸のプロポーションのバランスで仕立替をするかどうかをお尋ねいたしました。
その場合、現状よりも全体で30cm程、寸法が長くなるので飾られる場所によっては問題が生じる場合があるのでその旨も含めてお尋ねいたしました。
お客様から一般的な日本の掛軸の仕立にして欲しいが、30cmも長くなるのは少し飾る場所に制限があるので20cm程の長さUPで調整できないかとご相談があり、全体のバランスを整えつつ伸び幅を調整して仕立替を行う事に致しました。
最後にオプションを一つずつ確認して打ち合わせが完了しました。お客様は保存の際にお勧めの桐箱のご提案に大変喜んでくださり「The box is magic!!」と喜んでくださっていたのが印象的でした。

打ち合わせ詳細の確認
弊社で打ち合わせた内容を再度確認する為に、打合せ資料を後日作成し、お客様にメールでご確認いただきました。

弊社では色々と口頭で打ち合わせをした内容を齟齬が無いようにしっかりとまとめてダブルチェックを行っております。
その際に仕立替を行った際の仕上がり図のモックアップも作成し、お互いのイメージに間違いがないか入念にチェックするようにしております。
お客様から最終確認が取れ、いよいよ修理スタートです。
修復内容と工程の詳細
今回の修理では、以下の大まかな流れで作業を進めました。
1. 色止め・作品保護
まずは作品の絵具や墨が修理の工程の際に落ちないように色止め作業を行い、その後、仕立替の際の損傷を最小限にとどめる為の作品保護作業を行いました。2. 旧裏打紙の除去(めくり作業)
掛軸の裏側にある古い裏打ち紙を取り除く「めくり」の作業を実施。3. 作品洗浄&シミ抜き
作品の汚れを落とすための洗浄とシミ抜きを行いました。ただ、作品の状態が危険な為、出来る限りの範囲での作業となりました。かなりシミ汚れは改善しましたが100%の除去はやはり無理でした。弊社の評価として大幅に除去できたと感じており、作品の鑑賞の妨げは大きく軽減出来ました。4. 肌裏打ち・折れ伏せ
肌裏打ちを施し、裂け部分によるダメージを補修するため、折れ伏せを行い補強しました。5. 補彩
裂けや欠損があった部分に筆を入れ自然に鑑賞できるように調整いたしました。この作品は絹本に描かれた作品で紙本での補彩とは微妙に方法が異なる為、慎重に行いました。6. 再表具
最後に、お客様が選定された裂地や仕様で新しい掛軸として仕立て直しました。トータルの寸法も打ち合わせ通り20cmUPでまとめました。
修復完了
長く大変だった修復作業を終え、ついに掛軸が新しくよみがえりました。

掛軸のプロポーションも日本の伝統的な掛軸のバランスとなり落ち着いて鑑賞が出来るようになりました。
裂けがあった箇所も補彩により自然に鑑賞できるようになりました。
シミも完全ではありませんでしたが鑑賞する上ではそこまで気にならないレベルにまで除去出来ました。
お客様からのフィードバック
早速お客様にご連絡をさせていただき、アメリカにお送りさせていただきました。
荷物を受け取られたお客様は大変喜んでくださり、以下のようなレビューを頂戴いたしました。
アート・ノムラは100年前の掛軸の修復を見事に成し遂げてくれました。その掛軸はひどく損傷し劣化しており、複数の修復業者に断られた物でしたがアート・ノムラはそれを美しく修復してくれました。
Art Nomura did a magnificent job restoring a 100 year old scroll. It was badly damaged and deteriorated, and had been rejected by several restoration people. Art Nomura restored it beautifully.
複数の修復業者に断られていたというのはこの時に初めて知りましたが、大変困られていた中で弊社を頼りご来店くださった事がより一層それを聞いて嬉しく思いました。
お客様の期待に応える事が出来、お父様の大切な思い出の詰まった掛軸をよみがえらせる事が出来て弊社としても大変誇らしく感じました。
総括
弊社では今回のようにご来店での掛軸修理のご相談・ご依頼も承っております。
オンラインでのやり取りとは異なり、実際に裂地を作品に合わせながら打ち合わせを行えるため、仕立替後のイメージをより明確に共有することができます。
大切な掛軸の修理でお困りの方は是非お気軽にご相談ください。出来る限りの技術と気持ちで修復に対応させていただきます。






