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【桐箱修復】古い桐箱の蓋に書かれた箱書を残すにはどうしたら良いか?
【桐箱修復】 古い桐箱の蓋に書かれた箱書を残すにはどうしたら良いか?
掛軸や茶器の保管には昔から桐箱が用いられてきました。これは桐箱が防湿性、防虫性、耐火性に優れているからだと言えます。
そんな桐箱に関するご相談でよく聞かれるのが、
『桐箱の蓋に題字とか落款とか書いているのでそのままその情報を残したいけど桐箱がボロボロなので桐箱は新しくしたいけど何とかなりませんか?』
というご相談。
どういう事かというと掛軸は通常…特に明治時代以降に仕立てられた掛軸は桐箱に収められている場合が多いのですが、そこに作品のタイトルであったり作者名などを記載している場合が多く、その文字情報は掛軸の美術品の価値を判断する上でとても大切な物になってくるので出来るだけ残した方が良い物です。
ただ、桐箱自体が損傷していてボロボロになっている場合は桐箱が本来担っている保管という役割を果たす事が出来ません。
こういった場合に
「桐箱は新しくいしたいけど古い桐箱の文字情報も残したい。両方叶える方法はないでしょうか?」
という悩みが発生いたします。
これは結論から申しますと両方のニーズを叶える方法は ございます。
どうするかというと文字情報が書かれた蓋の部分だけを切り取り、新しい桐箱の蓋も同じ大きさの分だけくり抜いて移植するという方法になります。
なかなか高度な匠の技が必要な作業になってくるのですが弊社が取引をしている桐箱屋さんはこれが可能で過去何回も行ってきた実績があります。過去の事例はこちらの記事をご覧ください。
今回掛軸の修理をご依頼いただいたお客様にも、この桐箱の文字情報を残された方が良いですよとご提案させていただきご納得いただきました。
こちらが実際に移植作業を終えた新しい桐箱です。色が変わっている部分が古い桐箱の部分になります。
凄い技術ですよね。古い桐箱の文字情報の部分を切り取り、きっちりとその寸法に合わせて新しい桐箱の蓋もカットして古い蓋をはめ込み、他の部分を組み上げていくというとても高度な職人技です。発注しておきながらいつ見ても感心してしまいます。(笑)
これで古い桐箱の文字情報の部分は残せますし、桐箱の本来の役割である保管も出来るという形になります。
今回の掛軸の仕立替のご依頼は掛軸の傷みが激しかったので太巻での保管も提案させていただきました。太巻の芯を使用する事により掛軸を巻く直径を大きくする事が可能となり、巻く際に掛軸にかかる負荷を軽減する事が出来ます。
この太巻で巻いた掛軸は直径が大きくなるので保管する桐箱もそれに合わせて大きくなります。
今回は太巻への移植をご紹介させていただきましたが、もちろん通常の大きさの桐箱にでも移植出来ますのでご要望がございましたら是非遠慮なしにご相談ください。
今回ご紹介させていただいた内容を動画でさらに詳しくご覧になりたい方は以下の動画をご参照ください。