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オーストラリアからの掛軸修理依頼:こだわりの軸先で再表装
今回は、長年弊社をご愛顧いただいているオーストラリア在住のお客様より、黒牛の絵が描かれた掛軸の修理依頼を頂戴しました。
全体的にきつい折れシワが発生しており、鑑賞の妨げになってしまっている状態です。
こちらのお客様は、過去にも何度も掛軸の修理や表装の依頼をいただいており、今回も大切な掛軸の修復を弊社にお任せいただきました。
今回もこうして弊社を信頼して仕事を任せていただけるのは大変うれしく思います。
軸先のこだわり
今回のお客様からの依頼の特徴は通常とは違うチャレンジングな軸先を希望されたことです。
これまでも多くのお客様からの仕立替を受けてまいりましたが、通常通りの軸先ではなく少し遊びを入れてみたくなったのかもしれません。
お客様から希望の軸先のデザインのイメージ図を送っていただき、その独特なデザインに沿う形で、弊社が取り扱える軸先をいくつかご提案しました。

お客様から頂いたリクエスト
その中からお客様のイメージに最も近いものを選び、最終的にその軸先で仕立替えを行うことに決定しました。

弊社の提案した軸先
このような個別のリクエストにも柔軟に対応できるのが弊社の強みです。
裂地選定における調整
お客様は裂地についても特別なこだわりがあり、暗めで濃い色合いの無地の裂地を希望されました。
しかし、日本の床間で鑑賞する掛軸としては、暗く濃い色の裂地はあまり映えないため需要が少なく、弊社でも在庫は限られております。
そのため、お客様との対話を重ね、ご希望に沿いつつも日本の掛軸文化に適した裂地を提案し、最終的に双方が納得できるものを選びました。
このお客様は裂地への強いこだわりをお持ちでしたが、昨今の市場状況により、全てのリクエストに応えることが難しい場合もあることを説明し、最終的にはご理解をいただきました。
日本国内では掛軸市場が縮小傾向にあり、裂地の製造停止や価格高騰といった問題も生じているため、そういった事情も正直にお伝えしております。
逆にお客様のご希望を何とか実現しようとすると予算の桁が変わってくるお話になるのでそれはおそらくお客様の望むところではないだろうというお話もさせていただきました。
こちらが今回お客様にお選びいただいた裂地です。
作品の保護のオプションサービス
今回の掛軸は作品の損傷がかなり進行していたため、より安全に保管・鑑賞できるよう「太巻仕様の桐箱」をオプションでご提案いたしました。
太巻の桐箱は、特に価値の高い作品や修復を施した作品を安全に保管できる選択肢であり、長期間にわたる保存にも適しています。
このオプションサービスも、お客様の大切な作品を守るために提供している弊社ならではのサービスです。
太巻についてはこちらをご参照ください。
修理の成果とお客様の満足
掛軸の修理、仕立替が無事に完了いたしました。ひどかった折れジワもきれいに修復され、鑑賞を妨げなくなりました。
ご希望の軸先も格好良いですね。
お客様の元にお送りさせていただいたところ、以下のようなコメントをいただきました。
(日本語訳)
「野村様、
掛軸が無事に届いたことをお知らせします。
あなたとチームの皆様が素晴らしい修復と掛軸の仕立替えをしてくださり、本当に感謝しております。
仕上がりは素晴らしいです。
いつもありがとうございます。」(英語原文)
“Dear Mr. Nomura,
Just a quick note to let you know my kakejiku has arrived safely.
Thankyou to you and your team for doing such a marvellous restoration and remounting. The results are wonderful.
Best regards always.”
お客様からのこの温かいお言葉は、私たちにとって何よりの励みであり、これからもお客様の期待に応え続けるための原動力となります。
掛軸が飾られているお客様のご自宅のお写真も頂戴する事が出来、日本とは違う掛軸の飾り方に興奮を覚えました。素敵に飾っていただけて修理を担当した弊社としても大変うれしく思います。
まとめ
弊社では、国内外のお客様に対して日本の伝統を大切にしつつ、最適な提案と仕立てを提供しています。
今回のプロジェクトを通じ、お客様の細かなリクエストに応えつつ、修理、仕立替に取り組めたことは嬉しく思います。
今後も大切な掛軸の修理や仕立替えに関するご相談をお待ちしております。経験豊富な職人が丁寧に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。